ドローンを仕事にする上で関連する法規制の知識は必須となります。円滑にビジネスを進めていくのはもちろん、トラブルを起こさずに仕事を行っていく上でも重要です。
ドローンには飛行に関する法規制に「航空法」や「小型無人機等飛行禁止法」「道路交通法」が関連しています。また、カメラを使用するという点において「個人情報保護法」も知っておかなければなりません。
更には、ドローンはコントローラーから電波を飛ばして機体を操縦したり、機体から撮影した映像や画像を受信したりします。そういった部分で「電波法」も知っておく必要があります。
市販されている趣味向けのドローンであればあまり気にする必要のない法律ではありますが、ビジネスとしてプロ仕様のドローンを使う場合には「電波法」に関連する知識が必須となります。
今回はドローンの法規制の中でも「電波法」に関わる部分を解説していきます。
ドローンに関わる電波法のポイント
まず、「電波法」の中でドローンに関わるポイントを整理していきます。
重要となるのはドローンの操縦で利用している電波の「周波数帯」「送信出力」「利用形態」の3つです。
そして、この3つの項目に関して「無線局免許」や「無線従事者資格」の要不要が分かれてくるというのが重要なポイントです。
要するに使っているドローンによって免許や資格が必要となるケースが存在するということになります。
電波法の条文から見るドローンに関する規制
このポイントを意識しながら電波法の条文とドローンに関する規制を照らし合わせていきましょう。
今回もウェブ上で法令の条文検索ができる「e-Gov」というサービスを利用して、具体的な条文から法規制を理解していきます。
「e-Gov」
https://www.e-gov.go.jp
「電波法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000131
まず、法律の制定目的でもある第一条「目的」の条文を確認してみましょう。
電波法 第一条
「この法律は、電波の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。」
第4条には無線局の免許に関する内容が触れられています。
電波法 第四条
「無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げる無線局については、この限りでない。
一 発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令で定めるもの
二 二十六・九メガヘルツから二十七・二メガヘルツまでの周波数の電波を使用し、かつ、空中線電力が〇・五ワット以下である無線局のうち総務省令で定めるものであつて、第三十八条の七第一項(第三十八条の三十一第四項において準用する場合を含む。)、第三十八条の二十六(第三十八条の三十一第六項において準用する場合を含む。)若しくは第三十八条の三十五又は第三十八条の四十四第三項の規定により表示が付されている無線設備(第三十八条の二十三第一項(第三十八条の二十九、第三十八条の三十一第四項及び第六項並びに第三十八条の三十八において準用する場合を含む。)の規定により表示が付されていないものとみなされたものを除く。以下「適合表示無線設備」という。)のみを使用するもの
三 空中線電力が一ワット以下である無線局のうち総務省令で定めるものであつて、次条の規定により指定された呼出符号又は呼出名称を自動的に送信し、又は受信する機能その他総務省令で定める機能を有することにより他の無線局にその運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用することができるもので、かつ、適合表示無線設備のみを使用するもの
四 第二十七条の十八第一項の登録を受けて開設する無線局(以下「登録局」という。)」
無線従事者に関する項目は第三十九条から記載されています。
電波法第三十九条
「第四十条の定めるところにより無線設備の操作を行うことができる無線従事者(義務船舶局等の無線設備であつて総務省令で定めるものの操作については、第四十八条の二第一項の船舶局無線従事者証明を受けている無線従事者。以下この条において同じ。)以外の者は、無線局(アマチュア無線局を除く。以下この条において同じ。)の無線設備の操作の監督を行う者(以下「主任無線従事者」という。)として選任された者であつて第四項の規定によりその選任の届出がされたものにより監督を受けなければ、無線局の無線設備の操作(簡易な操作であつて総務省令で定めるものを除く。)を行つてはならない。ただし、船舶又は航空機が航行中であるため無線従事者を補充することができないとき、その他総務省令で定める場合は、この限りでない。」
また、さらに重要な項目として「技術基準適合証明」があります。これはドローンの機体が電波法に定められている技術基準に適合していることを証明するもので、一般的には「技適マーク」とも呼ばれます。
技適マークのないドローンは「免許を受けられない」または「違法になる」可能性があるので注意しましょう。
※技適マーク
電波法 第三十八条の二の二
「規模な無線局に使用するための無線設備であつて総務省令で定めるもの(以下「特定無線設備」という。)について、前章に定める技術基準に適合していることの証明(以下「技術基準適合証明」という。)の事業を行う者は、次に掲げる事業の区分(次項、第三十八条の五第一項、第三十八条の十、第三十八条の三十一第一項及び別表第三において単に「事業の区分」という。)ごとに、総務大臣の登録を受けることができる。」
以上が電波法において重要となる条文の一部になります。少し堅苦しい書き方になっているため理解するのが難しいかもしれませんが、そんな人は総務省が用意しているドローンの無線設備に関する制度をわかりやすく解説したサイトがあるのでそれをチェックしてみましょう。
「ドローンに用いられる無線設備について」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/drone/
こちらでは最初に触れた無線局免許や無線従事者資格の必要性とその条件となる機体の周波数帯、送信出力、利用形態などが表にまとめられています。
分類 | 無線局免許 | 周波数帯 | 送信出力 | 利用形態 | 備考 | 無線従事者 資格 |
免許及び登録を要しない無線局 | 不要 | 73MHz帯等 | ※1 | 操縦用 | ラジコン用微弱無線局 | 不要 |
免許及び登録を要しない無線局 | 不要※2 | 920MHz帯 | 20mW | 操縦用 | 920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用特定小電力無線局 | 不要 |
免許及び登録を要しない無線局 | 不要※2 | 2.4GHz帯 | 10mW/MHz | 操縦用画像伝送用データ伝送用 | 2.4GHz帯小電力データ通信システム | 不要 |
携帯局 | 要 | 1.2GHz帯 | 最大1W | 画像伝送用 | アナログ方式限定 ※4 | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 |
携帯局陸上移動局 | 要※3 | 169MHz帯 | 10mW | 操縦用
画像伝送用 データ伝送用 |
無人移動体画像伝送システム(平成28年8月に制度整備) | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 |
携帯局陸上移動局 | 要※3 | 2.4GHz帯 | 最大1W | 操縦用
画像伝送用 データ伝送用 |
無人移動体画像伝送システム(平成28年8月に制度整備) | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 |
携帯局陸上移動局 | 要※3 | 5.7GHz帯 | 最大1W | 操縦用
画像伝送用 データ伝送用 |
無人移動体画像伝送システム(平成28年8月に制度整備) | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 |
※1:500mの距離において、電界強度が200μV/m以下のもの。
※2:技術基準適合証明等(技術基準適合証明及び工事設計認証)を受けた適合表示無線設備であることが必要。
※3:運用に際しては、運用調整を行うこと。
※4:2.4GHz帯及び5.7GHz帯に無人移動体画像伝送システムが制度化されたことに伴い、1.2GHz帯からこれらの周波数帯への移行を推奨しています。
この表を見れば自分が使っているドローンが電波法によってどのような扱いを受けているのかが理解できます。もし免許や資格が必要な機体を利用しようとしている場合には必ず指定の手続きを行いましょう。
これらの規制に関しては、基本的にプロ仕様のドローンで主にFPVなど高画質かつ長距離の映像を伝送するために使用される高周波数帯(2.4GHzや5.7GHz)を使用するドローンにおいて無線局免許の取得や第三級陸上特殊無線技士以上の資格を求めるためのものです。
そこまでの周波数帯や送信出力を利用しないホビー用のドローンに関してはこれらの規制に抵触する可能性は低いでしょう。
基本的に電波法に関連する規制において無線局免許と無線従事者資格が必要となるのは5.7Ghz帯を利用する産業用ドローンが主となります。もちろんビジネスの現場においてこのようなドローンを扱う仕事も数多くあるため、将来的にドローンを仕事にしようと思っている人は関連する知識や資格の取得を目指しておきましょう。
2.4GHz帯を利用している機体に関しては送信出力によって規制の有無が異なってきます。
また、国によって電波の利用に関する規制が異なるため、海外製品のドローンを購入する時には注意しなければなりません。海外メーカーでも日本向けに規制をクリアさせた商品は多数ありますが、並行輸入品など正規の代理店を通じていない商品の場合、電波法に抵触する機体である可能性があります。
ハイスペックなドローンを購入する時には電波法を意識することと、正規品を購入しなければなりません。
無線局の開局手続きについて
また、無線局の開局手続きや無線従事者資格に関しては以下のURLから詳しい内容を確認できるのでチェックしておきましょう。
「総務省電波利用ホームページ-無線局開局の手続き・検査-」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/proc/index.htm
「総務省電波利用ホームページ-無線従事者制度-」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/operator/index.htm
ドローンを仕事にするときには飛行に関する法規制「航空法」「小型無人機等飛行禁止法」「道路交通法」、撮影に関する法規制「個人情報保護法」、電波利用に関する法規制「電波法」という5つの法律を理解しなければなりません。
これらの法律を正確に理解することはドローンを仕事にする上で最低限覚えておく必要があるでしょう。
思わぬところでトラブルを巻き起こしたり、意図せず法律に違反してしまうといった事態を避けるためにもドローンに関する法規制をしっかりと勉強しておきましょう。