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個人情報保護法とドローンの関係-肖像権とプライバシー

ドローンを飛行させる上で関連する法規制について事前に理解しなければなりません。
ドローンの法律といえば「航空法」や「小型無人機等飛行禁止法」といった「どういった場所でドローンを飛ばすことが禁止されているか」という観点が中心にあります。

しかし、ドローンは飛ばすだけではなく、機体に搭載されたカメラで空撮を行うこともできます。

カメラを使って映像や写真を撮影する以上、被写体となる人や物に対しては配慮が必要となります。

他人を勝手にスマホなどのカメラで撮影するのは「盗撮」に該当するのは想像に易いですが、それと同様にドローンであっても他人や個人情報を伴う被写体を無断で撮影することに関しては規制がかかります。

このようにドローンの飛行ではなく、カメラの撮影における法規制に関連するのが「個人情報保護法」です。

今回はドローンの法規制の中でも、個人情報保護法に関わる部分を解説していきます。

個人情報保護法の歴史

歴史のイメージ

「個人情報保護法」は正式名称「個人情報の保護に関する法律」といいます。2003年に成立し、2005年に施行されました。この法律ができた背景にはインターネットなど、情報化社会が発展する中でプライバシーが問題化していたことや、住民基本台帳法の改正に伴う個人情報保護法制定への社会的要請などがありました。

第一条では法律を制定する目的が記載されています。

今回もウェブ条で法令検索ができる「e-Gov」というサービスを利用して具体的な条文から法律を理解していきましょう。

「e-Gov」
https://www.e-gov.go.jp

「個人情報の保護に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=415AC0000000057

個人情報保護法 第一条
「この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」

今では当たり前となっていますが、当時はインターネットが普及しつつあった時代でもあり、ネット上での個人情報の利用や管理に問題が頻出していたという背景がありました。

また、今ではビッグデータなどと呼ばれる大量の個人データといった個人情報を事業として取り扱うためのガイドラインという役割にもなっています。

個人情報を活用することでさまざまな有用性を発揮する一方で、個人情報がみだりに流出することで権利を侵害されることから保護するための法律です。

これは基本的に個人情報を扱う事業者が遵守すべき義務などが定められています。つまり、今後ドローン関連の仕事にする中で空撮などの映像を制作するために個人情報の管理について理解をしなければなりません。

ドローンを使った仕事をする上で目を通しておきたいのが個人情報保護法第15、16、17、18、20、23条です。

それぞれ条文から詳しく見ていきましょう。

個人情報保護法の中でドローンに関連する部分

要点イメージ

個人情報保護法 第15条 利用目的の特定
「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。」

個人情報を取得し事業を行う場合には、取得した個人情報をどのような目的で利用するかを特定しなければなりません。

個人情報保護法 第16条 利用目的による制限
「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。」

利用目的を特定した上で、その目的以外で個人情報を扱うことは許されていません。

個人情報保護法 第17条 適切な取得
「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」

本人の同意を得るなど以外の偽りや不正な手段で個人情報を取得してはいけません。

個人情報保護法 第18条 取得に際しての利用目的の通知等
「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」

個人情報を取得した本人に利用目的を通知しなければなりません。

個人情報保護法 第20条 安全管理措置
「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。」

個人情報の管理についても言及されています。

個人情報保護法 第23条 第三者提供の制限
「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」

本人の同意を得ずに個人情報を第三者に提供することは許されません。

条文に記載されている「個人情報取扱事業者」とは、個人情報保護法第二条より「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義されています。

基準としては、5000人分を超える個人情報データベースなどを事業活動に利用する事業者となっているため、趣味でドローンを飛ばすだけの人にとってはこちらの法律は対象になりません

個人情報データベースと判断される基準としては以下が該当します。

  1. 表札の氏名が判読可能な状態で写っていたり、個人の 容貌につき個人識別性のある情報が含まれる場合
  2. これらの映像にぼかしを入れるなど の加工をしても、加工前の映像も保存している場合

ドローンで撮影した映像に個人情報が映り込んでいる場合、その量に応じて個人情報取扱事業者かどうかの判断がなされます。

ここまで読んでみると、趣味でドローンを飛ばす人には個人情報保護法はそこまで関係ないように思えます。確かに趣味レベルでは法律上で規定されている「個人情報取扱事業者」と判断されることはありません。

ですが、他人の個人情報をみだりに撮影・公開してはいけないのは当然のことです。個人情報保護法の対象ではないからと言って、問題にならないわけではありません

ドローン撮影素材のインターネット上での取扱い

ドローンとインターネット

総務省では平成27年9月に「ドローンによる撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」を公開しています。

「ドローンによる撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000376723.pdf

ここにはドローンで撮影した映像などをインターネット上取り扱う際の基本方針や具体的に注意すべき事項についてが詳しくまとめられています。

ドローンで撮影を行う上で焦点になるのが「プライバシー」と「肖像権」です。

例えば、映像内に「個人の住居の外観」や「ナンバープレート」「洗濯物」「屋内の様子」など住所や生活状況が推測できるようなものが映り込んでいた場合、プライバシーの保護対象となる可能性があります

また、公共の場で撮影した映像に対しては、受忍限度内として肖像権侵害に問われないケースもありますが、特定の個人に焦点を当てたような映像の場合だとアウトになります。

また、公共の場ではない場所や通常撮影・公開されることを許容しないと考えられる場所などは個別の判断に任せられます。

「撮影」と「公開」についても場合わけが必要です。「撮影」自体は防犯などの公益性のある目的でも、その映像を「公開」することに関しては肖像権侵害となる可能性があります

このような注意喚起がなされているので、ドローンを使って空撮を行うときには、「住宅地にカメラを向けない」「プライバシー侵害の可能性がある映像を公開するときにはぼかしなどの加工を施す」などの配慮が必要となります。

ドローンを使えば誰もが簡単に空撮映像を楽しむことが可能になりますが、カメラで映像を撮影するという特性を考えたときにプライバシーや肖像権などについて目を向けてみてください。

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