ドローンには気軽に購入できるトイドローンから趣味でとことん楽しめる機体や仕事でも使えるプロ向けのものまで幅広くラインナップされています。
やはり仕事でドローンを使うのであれば、スペック面で優れたプロ向けの機体を購入すべきでしょう。では、ホビー向けとプロ向けのドローンにはどのような違いがあるのでしょうか。
今回はプロ向けのドローンに必要なスペックやおすすめのプロ向けドローンを紹介していきます。
プロ向けドローンの条件
そもそもプロ向けドローンの条件は一体何なのでしょうか。具体的にイメージするために空撮カメラマンの仕事で考えてみましょう。
ドローンを使って空撮映像を撮影する仕事で必要となるものはたくさんあります。美しい映像を撮影するためには搭載されたカメラ自体のスペックはもちろん、ブレない映像を撮影するためには飛行する機体が揺れない安定性も重要です。長時間の撮影を行うためには十分なバッテリー容量による飛行時間も必要となります。
その他さまざまな機能が必要となっており、ホビー向けのドローンにはなかなか搭載されていないプロ向けのスペックが求められます。
また、業種に応じても業務上ドローンに求められるスペックはさまざまです。例えば、ドローンを農薬散布に使用する場合、農薬をドローンから噴射する機能が必要となります。
物流の分野でドローンを応用するには、重たい荷物でも運べるほどのパワーが必要となりますし、災害救助に応用することを考えると人が行けない場所にも入れるだけの耐久性が求められます。測量でドローンを使う際にも高性能なカメラが必要となります。
このようにドローンを使う仕事を行うには、それぞれの業務で求められるスペックを有した機体を用意する必要があります。
プロ向けドローンとホビー向けドローンの違い
では、具体的にプロ向けとホビー向けでどのような違いがあるのか、大手ドローンメーカーの「DJI」でラインナップされている機体を比較していきましょう。
DJIでは「一般向け」「プロ向け」「産業用」の3つのカテゴリが存在します。一般向けの中にも仕事で使えるようなハイスペックな機体もありますが、まずはこの3つのカテゴリを代表する機体の性能をチェックしていきましょう。
一般向けドローン
一般向けドローンには「MAVICシリーズ」「Phantomシリーズ」があります。そこから今回は「MAVIC Air2」と「Phantom 4 Pro」の2台を紹介していきます。
・重量:570 g
・最大上昇速度:4 m/s (Sモード)4 m/s (Nモード)
・最大下降速度:3 m/s (Sモード)3 m/s (Nモード)5 m/s (Sモードで急降下中)3 m/s(全てのモードで高度4500 m以上の時)
・最大飛行時間:34分
・最大傾斜角:35° (Sモード)20° (Nモード)* 強風下では35°
・ホバリング制度範囲:垂直:±0.1 m (ビジョンポジショニングあり)、±0.5 m (GPSポジショニングあり)水平:±0.1 m (ビジョンポジショニングあり)、±1.5 m (GPSポジショニングあり)
・センサー:1/2インチCMOS、有効画素数:12 MPと48MP
・レンズ:FOV:84°、35 mm判換算:24 mm、絞り:f/2.8 、撮影範囲:1 m~ ∞
・ISOレンジ:動画:100~3200 (オート)、100~6400 (マニュアル) 写真(48MP):100~1600 (オート)、100~3200 (マニュアル)
・シャッター速度:電子シャッター:8~1/8000秒
・動画解像度:4K Ultra HD:3840×2160 24 / 25 / 30 / 48 / 50 / 60fps
2.7K:2688×1512 24 / 25 / 30 / 48 / 50 / 60fps
FHD:1920×1080 24 / 25 / 30 / 48 / 50 / 60 / 120 / 240fps
4K Ultra HD HDR:3840×2160 24 / 25 / 30fps
2.7K HDR:2688×1512 24 / 25 / 30fps
FHD HDR:1920×1080 24 / 25 / 30fps
・重量:1375 g
・最大上昇速度:Sモード:6 m/s、Pモード:5 m/s
・最大下降速度:Sモード:4 m/s、Pモード:3 m/s
・最大速度:Sモード:72 km/h、Aモード:58 km/h、Pモード:50 km/h
・最大飛行時間:約30分
・最大傾斜角:Sモード:42°、Aモード:35°、Pモード:25
・動作環境温度:0~40℃
・ホバリング制度範囲:垂直:±0.1 m (ビジョンポジショニングあり)、±0.5 m (GPSポジショニングあり) 水平:±0.3 m (ビジョンポジショニングあり)、±1.5 m (GPSポジショニングあり)
・センサー:1インチ CMOS、有効画素数:20MP
・レンズ:視野角:84°、8.8 mm/24 mm (35 mm判換算) 、f/2.8~f/11 オートフォーカス (1 m~∞)
・ISOレンジ:動画:100~3200 (オート)100~6400 (マニュアル) 写真:100~3200 (オート)100~12800 (マニュアル)
・シャッター速度:電子シャッター8~1/8000秒
・動画解像度:C4K:4096×2160 24/25/30p @100Mbps
2つの機種の機体とカメラのスペックを並べてみました。MAVIC Air2はミドルエンド向けの機種なのに対して、Phantom4 Proは一般向けの機種の中でもよりハイエンドなモデルです。
価格差が7万円ほどあるだけではなく、機体とカメラに絞ってみても1つ1つのスペックに違いがあるのが伺えます。これらはDJIの中でも一般向けに該当する機種ですが、中にはPhantom4Proを仕事に使用するといった方もいます。
プロ向けドローン
では、次にプロ向けドローンをみていきましょう。プロ向けドローンから紹介するのは「INSPIRE 2」です。
・重量:3,440g
・最大上昇速度:Pモード/Aモード:5m/s、Sモード:6m/s
・最大下降速度:垂直:4 m/s、チルト:4~9m/s、デフォルトのチルト7m/s。
・最大速度:94km/h
・最大飛行時間:約27分
・最大傾斜角:Pモード:35°(前方ビジョンシステム有効時:25°) 、Aモード:35°、Sモード:40°
・動作環境温度:-20~40℃
・ホバリング制度範囲:垂直:±0.5mまたは ±0.1 m (下方向のビジョンシステム有効時) 、水平:±1.5mまたは±0.3 m (下方向のビジョンシステム有効時)
機体のスペックだけを見ても一般向けよりも高い性能を有していることがわかります。さらに、「INSPIRE 2」は専用のジンバルカメラを状況に応じて付け替えるといったことにも対応しています。映像制作に特化した機能を備えており、優れた飛行性能と共に撮影面での機能を充実させています。
価格はPhantom4 Proの2倍となる40万円近くする機体ですが、プロの空撮カメラマンとして活動していくためには必要な機体です。
産業向けドローン
最後に産業向けのドローンを紹介していきます。DJIにはさまざまな産業用ドローンがラインナップされていますが、今回取り上げるのは「P4 MULTISPECTRAL」です。
・重量:1487 g
・最大上昇速度:6 m/s(自動飛行)、5 m/s(手動制御)
・最大下降速度:3 m/s
・最大速度:50 km/h(Pモード)、58 km/h(Aモード)
・最大飛行時間:約27分
・動作環境温度:0℃ ~ 40℃
・ホバリング制度範囲:垂直方向:±0.1 m、水平方向:±0.1 m
・センサー:6台の1/2.9インチCMOS(可視光イメージング用RGBセンサー1台、マルチスペクトルイメージング用モノクロセンサー 5台を含む)、各センサー:有効画素数 2.08 MP(合計2.12 MP)
・レンズ:FOV(視野角):62.7° 焦点距離:5.74 mm(35 mm版換算:40 mm)、オートフォーカスは∞に設定 絞り:F2.2
・ISOレンジ:200 ~ 800
・シャッター速度:1/100 – 1/20000 s (可視光イメージング)、1/100 – 1/10000 s (マルチスペクトル イメージング)
・最大静止画サイズ:1600×1300 (4:3.25)
「P4 MULTISPECTRAL」は農業における作物データの収集向けに開発された機種です。飛行性能やカメラ機能だけではなく、搭載された6つのカメラで農地を測定し、cmレベルの正確性で測定値を得ることができます。
精密農業や環境モニタリングといった分野で活用されている産業向けドローンです。
こういった機体は優れたスペックと共に業務ごとに特化した機能を備えていることが多いです。
DJIのようにホビー向けからプロ向けの機種まで幅広くラインナップしているメーカーばかりではありません。中には、業務用ドローンを専門に扱っているメーカーもあります。
産業用ドローン専門メーカー
「PRODRONE」は日本の産業用ドローンメーカーで全天候対応機種や屋内点検、農薬散布機搭載など幅広い業務に対応する機種を数多くラインナップしています。
映像制作用ドローンというよりは、測量や点検、警備、環境モニタリング、倉庫内活動、農薬散布といった業務に使用されます。
「enRoute」も産業用ドローンを専門に扱っているメーカーです。2006年に設立され、農業用ドローンの分野ではNo1の導入実績を誇ります。その他にも測量や点検、インフラ保守、救助などさまざまなシーンで活躍する産業用ドローンを取り扱っています。
プロとしてドローンを扱う仕事をする際に、プロ向けにカテゴライズされる機種が絶対に必要というわけではないかもしれません。しかし、プロ向けドローンには業務を高いクオリティで行うための性能が備わっており、業務内容に特化した機能も充実しています。
より高いレベルの仕事をする上で必要になる可能性が高いので、ぜひプロ向けドローンについても詳しくなってみましょう。